第四講 入院が決まった家族に対して
患者が入院すると「これで肩の荷が下りた」と話す家族は少なくない。
しかし,アルコール依存症という疾患は
「入院さえすれば回復へつながる」というケースはわずかであり,
第0講で述べた「入院中の飲酒が原因で強制退院」
という事態も起きかねないのである。
これが統合失調症やI型の双極性感情障害であったなら,
「複数回の入院を経て病識を獲得していく」
ケースも存在するだろう。
しかしながらアルコール依存症では,入院回数が増えれば増えるほど,
患者は精神科医療への不信感をつのらせ,家族との関係も悪化してしまうケースは少なくない。
もちろん入院治療を経て,その後も長らく断酒が継続されるケースも存在する.
しかし,それが実現されるには,退院後,断酒会やデイケアへつながったり,相性の良いパートナーや主治医と出会ったり,
入院前は存在すら知らなかった組織や人物とのかかわりが不可欠と言える。
そのため患者の家族には
「患者は断酒している期間のみ社会生活を送ることができる」
「本人の酒量のコントロール能力は回復しない」
「入院はゴールでもスタートでもなく緊急対処」
「自由にお酒を買える退院後が治療の本番」
といった疾患の本質を説明しておかなければ,入院治療への過剰な期待から,
家族が患者の「良い依存」となる日がより遠のいてしまうのである。
(精神神経学雑誌 123: 500-505, 2021)
プラセボのレシピ:第418話
東京都豊島区の心療内科・精神科:ライフサポートクリニック
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