プラセボのレシピ

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ほぼ日更新 アルコール依存症治療における覚書 1

2021年09月04日 · コメント(0) · 依存症

第一講 「自分が何者であるのか」を知るには

「人はなぜ依存症になるのか」と問われたなら,「人はヒトであると同時に,人間であるから」だと言える。

人間とは「人と人の間」と書くわけだが,これは,人が一人では生きられない存在であることを物語っている。

無人島に一人漂着した場面を想像してみてほしい。

はじめは誰もが衣食住の確保に必死となるだろう。

しかし,仮にそれらをすべて満たせたとしても,満足はできない。

故郷に想いを馳せ,何とか脱出を試みるかもしれないし,遠方に船らしき物体が見えたなら全力で「ヘルプ」と叫ぶのである。

そして,そこでのヘルプの対象は,体ではなく心なのだ。

次に「なぜ人は一人では生きられないのか」を考えてみると,答えは

「人は自分が何者であるのかを考えてしまうから」

「その答えを見つけるには,他者からの評価や他人との比較が欠かせないから」

となる。

つまり,人は自分をヒトとして哺乳類ヒト科,人種は黄色,性別はオスなどと定義できても,

人間としての自分は他者の存在なくして定義できないのである。

人は人とかかわることで,さまざまな感情を手に入れ,人生の意味や意義を見いだす。

本稿ではその際の自己重要感や連帯感,安心や自由といった肯定的な感情をもたらす他者を「良い依存」と呼ぶことにする。

一方,良い依存をもたない人の心は無人島状態であり,そこでの飲酒は疑似的な「良い依存」として機能する。

なぜならアルコールは,人を酩酊させ誇大的な自己重要感や自由といった感情や,鎮静させ連帯感や安心といった感情をもたらすからだ。

つまりアルコール依存とは人ではなく飲酒による自己認識の獲得行為と言えるだろう。

しかし,それは幻想であるため当人の心が救われることはない。

それゆえ,治療の成否は治療者が当人の良い依存になれるか否かにかかっており,

そのためには,まずは患者の話に丁寧に耳を傾け,安心感や自己重要感を与えることが欠かせないのである。

(精神神経学雑誌 123: 500-505, 2021)

プラセボのレシピ:第418話

東京都豊島区の心療内科・精神科:ライフサポートクリニック

当院はカウンセリング治療を大切にするメンタルクリニックです。

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