プラセボのレシピ

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ほぼ日更新 「性依存症」教育講演 ㉛

2020年05月05日 · コメント(0) · 依存症

ここからは、私が考案した行動療法「THE TPO」について説明をしてみます。

依存症とは「意志が弱い」のではなく、条件がそろう(引き金が引かれる)と逆らえない病気でした。

覚醒剤依存症であれば目の前に覚せい剤があれば、ギャンブル依存所であればお金を所持した状態でパチンコ店を発見したなら、

どんなに「二度としない」と決めておいても役に立たず、逮捕や破産への恐怖も吹き飛んでしまうのです。

であるならば、依存症の患者さんがすべきことは、

「自身の引き金を特定し、それが引かれない(引けない)よう前もって潰しておく」

ことなのです。

私は引き金を、以下の6種類に分類し(THE TPO と名づけています)、全ての患者さんがノートに整理をしています。


T(ツール)   :道具 

H(ヒューマン ):人物

E(エモーション):感情

T(タイム)   :時間

P(プレイス)  :場所

O(アザー)   :その他


Tは、問題行動をするための「道具や手段」です。

・お酒やギャンブルなら現金

・盗撮ならスマホやカメラ

・薬物なら売人の連絡先

・窃盗ならチャックのないトートバッグ

・痴漢なら素手

などで、ネットの掲示板などで薬物を購入したり、オンラインで馬券を購入していた方は、パソコンやスマホも「T」となります。


Hは、問題行動をする際の「対象や仲間など」です。

・アルコールや薬物なら使用する仲間や売人

・盗撮ならスカートの女性

・ギャンブルなら競馬仲間

・露出や窃盗なら一人ぼっち

などで、「親やパートーナと喧嘩をするとやってしまう」なんて方は、その方も「H」となります。


Eは、行為を誘発する感情(気分)です。

これらは直接的に避けのは困難ですが、

・怒りや不安

・孤独や寂しさ

・退屈

・疲労感

などで、上記の「H(ヒューマン)」とも関連があります。


Tは、問題行動を行っていた時間帯です。

・痴漢ならラッシュアワー

・アルコールなら、仕事が終わったら

・ギャンブルなら休日のお昼から

などとなります。依存症の方は「忙しいとその反動で(問題行動を)やってしまう」なんて方は多いのですが、「暇が最大のリスク」という方も多いです。


Pは、問題行動に繋がる場所です。

・痴漢なら満員電車

・盗撮なら書店やエスカレーター

・窃盗ならスーパーやドラッグストア

・ギャンブルならパチンコ店や馬券売り場

などで、盗撮なら「専用のカメラ」を販売しているお店(ネット上含む)」なども該当します。


Oは、上記以外でその方固有の引き金があれば書き出します。

痴漢や盗撮であれば「そうしたアダルトコンテンツを見ると、やりたくなる」

ギャンブルであれば関連するユーチューブの動画やパチスロの雑誌が、

アルコール依存症の方であれば、「ノンアルコールビールが引き金になる」なんてケースは多いです。

Oの「アザー」に関してもう少し説明をしますと、

問題行動が痴漢の方は、なぜ「痴漢系のアダルトを見ない」が大切なのか。

これは、人は依存対象に関する疑似的な行為や物質でも脳内でドーパミンが分泌されてしまうからです。

ギャンブル依存症の治療を進めていくと、

「YouTubeでパチスロの動画を見ていれば代替えになります」

「パチンコ店に入って、他人が打っているのを見れば満足できたので、この戦法でいきます」

なんて話す方は少なくないのですが、それで成功する方はいないのです。

なぜなら、ドーパミンの耐性により、疑似的な行動だけではやがて出なくなってしまうからです。

ノンアルコールビールも例外ではありません。

「最近のは美味しいからこれでいきます」

なんてアルコール依存症でない方でも話しますが、多くの方が時間が経つと元のビールに戻ってしまうのです。


このように、私の治療では全ての患者さんに「THE.TPO」設定して貰い、一生涯その引き金が引かずに済むような「行動のルール」を設定するのです。

「一生涯」なんて言うと、大げさに聞こえるかもしれません。

しかし、アルコールでも痴漢でもギャンブルでも、脳内にできた依存症の回路を消すことはできません。

依存症になった脳をなる前の脳に戻すことはできないのです。

ただし、引き金さえ引かれなければ問題行動の再発や再犯は防げるのです。

「二度としない」ではなく「生涯、引き金を潰し続ける」

これこそが依存症から人生を回復へと導くキーワードなのです。

(次回へ続く)

プラセボのレシピ:第415話

東京都豊島区の心療内科・精神科:ライフサポートクリニック

当院はカウンセリング治療を大切にするメンタルクリニックです。

うつ病や不安障害に加え、依存症や発達障害の治療を受けることも可能です。

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