プラセボのレシピ

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とっても怖い「お酒」の話

2014年07月04日 · コメント(0) · 健康

「アルコール依存症についてもう少し教えてください」

前回のブログ以降、こうした質問が何件か寄せられた。

そもそも「アルコール依存症」とはどういった病気なのか?

今日はこの続きについて、もう少し書いてみたい。

「アルコール依存症」

この病気は、あるタイミングをもって「完成」をする。

そして、完成したが最後、仕事や家族を失ったり、または体を壊し死に至るのである。

ここでは、代表的な一つのケースをあげてみたい。

毎晩の飲酒に加え「休日の昼間からの飲酒」

依存の闇は、ここから広がる人が少なからずいる。

休みの日に、一日中、大量のアルコールを飲む「癖」がつく。

すると、徐々に

「前日に飲みすぎてしまい、月曜日の朝に出勤できなくなる」

なんて日がちらほら出てくるのである。

これが独身の人だと、「上司に絞られ反省する」なんてケースもあるのだが、

妻が会社に

「今日は風邪で休みます」

なんて連絡を入れようものなら、依存の闇はさらに深みを増していく。

その後は毎晩の飲酒の量も増加の一途をたどり、社内でも「朝から酒臭い」なんて噂をされるようになる。

当然、午前中の仕事の能率は落ち、またミスも増えてくる。

さらには「酒が切れると頭が回らない」などといったアルコールの離脱症状も出現し、「仕事の合間にコンビニでビールを買っていた」なんて場面を目撃されるのである。

こうしたことを何度も繰り返していけば、仕事にならなくなるのは必然である。

やがて、会社の内外での信用を失っていき、会社の業績が傾いた際などにはまっ先にリストラの対象となってしまうのである。

そして解雇されるとほどなくして、この「アルコール依存症」は完全に完成するのである。

昼間から自宅で酒を飲み、新しい仕事を探そうともしない。

家族とぶつかる回数は日ましに増え、とうとう家族にも捨てられてしまうのである。

また、定年まではなんとか勤め上げたものの、定年を機に依存症が「完成」してしまうケースも少なからずある。

せっかく家族のために苦労して勤め上げたのに、築きあげたその全てを失ってしまうのである。

そして、以外かもしれないが時間的に自由が効く経営者も「アルコール依存症の」リスクは結構高い。

日中から酒を飲みながら仕事をしている中小企業の経営者に、僕はこれまで何人も会ってきた。

元経営者が、アルコール依存症により職も家族も失い「川原でホームレスをしていた」なんてケースも僕は知っている。

「みんなの前ではよく笑うが、一人の時は泣いている」

経営者には、こんな感情の触れ幅が大きい人が少なくないのだが、

お酒は、経営者ならではの「孤独感」を癒してくれる劇薬なのである。

そもそも、なぜアルコール依存証は治らないのか。

それは「依存が依存を強化する」からである。

人は誰しも、お酒を飲むと多かれ少なかれ「酒に強く」なっていく。

これを「耐性」と呼ぶが、結果としてこれまでのお酒の量では酔えなくなり、ますます飲む量は増えていく。

また「一杯目より二杯目の方が美味しい」、と感じるのもアルコールの特徴である。

「あと一杯だけ」

こんなセリフは、誰もが言ったり聞いたりしたことがあるはずである。

そして、最も怖いのは前回も話した

「酒さえあれば、あとはどうなってもいい」

「酒がない人生なんて意味がない」

こんな価値観が、「病気の症状」として頭にこびりついてしまうことである。

学生時代は、それこそ酒などなくても楽しい毎日だったはずなのに、そんな記憶もどこかにいってしまうのである。

また、心だけでなく体も依存をしてしまう。

酒が抜けると禁断症状として、イライラ感、手の震え、大量の発汗、また重症例では幻覚までもが出現する。

「床一面をカタツムリが埋め尽くしています」

何もない床の上で必死に足踏みをし、悲痛な表情で僕にこう訴えていた入院患者を僕は今でも忘れることができない。

そう、つまりいくら強靭な意志でアルコールを止めようにも、止めたら止めたで今度は禁断症状という新たな問題が発生するのである。

「自分はまだアル中ではないから大丈夫です」

アルコールの大量常飲者はいつだってこのように話をする。

しかし、なったが最後、たとえ医者から

「止めないと体を壊して死ぬぞ」

「家族に捨てられるぞ」

こう言われる状況であっても、止めることができない。

いや、もっと正確にいうならば

「それでも致し方ない」

と、感じてしまうのである。

「お酒はせめて二日に一度にしてください」

毎晩お酒を飲む方に、僕はいつだって診察中にこう話しているのだが、

「自分はまだアル中ではないので大丈夫です」

「仕事はちゃんとできてます」

残念なことに、このように返事をされることがほとんどなのである。

プラセボのレシピ : 精神科医 山下悠毅

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