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一番間違った「ダイエット法」

2011年11月10日 · コメント(0) · ダイエット

世の中には、様々な「ダイエット法」があるが、最も間違った「ダイエット法」をあげるとするならば、それは「食べないダイエット」だと思う。

今日は「拒食症」について話した上で、その事について説明してみたい。

精神科医が治療するにあたって、最も治療が困難な病気の一つに「拒食症」がある。

この病気は、古くから「ボディーイメージの障害」と定義され、どんなに痩せようと、患者は「まだ太っている」と認識し、「極度の痩せ願望」を抱く。

「強い妄想にとらわれる」という点において「精神病」に近い部分もあるといえよう。

体重が30キロ代にもなると、さすがに家族や友人が心配し「無理矢理、連れてこられた」という形で、治療が開始される場合がも多い。

僕はこれまで、体重31キロで「普通の生活を送っています」と元気に話す女性患者に会った事がある。

ただし「治療」といっても、本人に「病識」が有るわけでは無く、また「妄想」ともとれる「自分が太っている」という認識を「薬」や「カウンセリング」で、簡単に治療できるわけでもない。

(3割程度の患者には、薬物療法とカウンセリング療法で治療可能というデータがある)

最終的には、生命を維持するために、無理矢理にでも栄養を「大量点滴」するのだが、これも「一時しのぎ」にすぎない。

もちろん治療(妄想の修正)へ向かう患者もいるが、1割程度の患者は、どんなに治療が介入したところで、最後には死亡してしまうのである。

薬も効かず、カウンセリングも効かず、点滴も本人が無理矢理抜いてしまう。しかし、このままでは患者が衰弱死してしまう。

こんな時にとられる「最後の治療法」がある。

(これは、「このままでは死んでしまう」という時のみにされる、危険な治療法である)

この治療法は、まず患者に入院してもらい「食事を与えない事」から開始する。

もちろん食事を「全く与えない」のではなく、ただでさえ少ない「患者が日常的にとっている総カロリー」をさらに下回る食事量を与えるのである。

具体的には、その患者が「1日600キロカロリー」の食事量であったならば「1日500キロカロリー」程度の量を与える。もちろん、「衰弱死」と隣り合わせの、危険な治療法である。

すると何が起きるのであろうか。

これまでは「太るから食事はいりません」と、食事は「バナナ」と「少量のパン」程度しか口にしなかった患者が

「ちょっと食事が少ないから、もう少し下さい」と、さすがに言い出すのである。

しかし、ここで治療者はすぐに食事を与えてはいけない。数日間、さらに体重が落ちるリスクを認識しつつも、その量しか与えないのである。

そして数日後、例えば1日650キロカロリーの食事を患者に与えると、患者は数日間の食事量への不満足感から、その食事を完食するのである。

そしてまた翌日から、再度少なめ(例えば550キロカロリー)の食事を与え、再び「足りない」と感じさせ、こういった行為を何度も繰り返す。

これがうまくいくと、本当に、患者は「一般人と同等の食事量」を食べるようになるのである。

これはつまり、世に言う「リバウンド」を何度も起こさせているのである。

食べない事で生まれるこの「リバウンドの力」は、薬でもカウンセリングでも治せなかった「精神病ともとれる妄想」をも破壊しうる力がある。

よくある「夜は一切食事を摂らない」「お米は食べない」などといった「食べないダイエット」も実はこれと同じ事と言える。

過酷な食事制限は、結局は食事量を増やす方向へと「洗脳」していくのである。

この話をすると、

「じゃあやはり、エステなどがいいのか」

といった質問をされる。

そんな時、僕は決まって

「確かにエステでリバウンドは起きませんが、そもそも揉んだり、機械を体に当てる事で痩せる(体脂肪が減る)事もありません」

と答えるようにしている。

これは、前回話した

「副作用が無いサプリには、作用も無い」

といった事と、どこか共通点があると言えるのである。

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