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下着泥棒の心理分析

2017年05月29日 · コメント(0) · 依存症, 深層心理

なぜ、下着泥棒は下着を盗み、そしてそれらを押入れなどに大量に保管をするのか。

今日は、こうしたいわゆる「病的窃盗」の心理について書いてみます。

人は、美味しいものを食べる・好きな異性と性的接触をする・タバコを吸う・飲酒や違法薬物を使用する、こうした行為を行うと脳内で「快」と呼ばれる感情の源であるドーパミンという物質が分泌されます。

人気のラーメン店に並ぶのも、雨の日にわざわざタバコを買いに出かけるのも、全てこのドーパミンが脳内で分泌されることが原因です。

そして、このドーパミンはそれだけでなく、自分の中で「価値がある」と感じるものを得た時や、「自分にしか出来ないであろう」と感じることをやってのけた際にも脳内で分泌され、これがギャブル依存症や、痴漢、盗撮、病的窃盗といった病気の原因となるのです。

下着泥棒の方の治療をしていると「なんとなく盗れそうだったから盗ってみた」「お金を盗み入ったところ下着もあったので一応、盗っておいた」初回はこうしたケースがとても多いのです。しかし、一度成功したが最後、それが本人の深層心理において「価値ある行為を達成できた」と認識されたなら、(たしかに日常下において他人の下着はレアアイテムです)彼らはもうお金を盗ることよりも何よりも、下着を盗ることに魅せられてしまうのです。(脳内に依存症の回路が形成されてしまうのです)

では、なぜ下着泥棒は大量の下着を盗み続けるのか。それは、このドーパミンという物質を出す神経細胞が刺激に対して反応が鈍くなっていくからです。

要は、毎回おなじ量のドーパミンを出すためには、より強い刺激や頻度が必要となってしまうということです。

お酒でも覚せい剤でも、使い続けると徐々にその使用量は増えていきますが、これを下着泥棒に当てはめるなら、より頻回に、より大量に、そしてよりレアなものを盗らないとドーパミンが出なくなってしまう、ということです。

彼らも始めは、手が届くところに干してある下着で満足できたのです。しかし、その後は電柱に登らないと盗れない下着、高層マンションのベランダの下着と、どんどんエスカレートしていき、それこそ命がけの作業になっていくのです。

しかし、彼らはそれを盗めど盗めど、決して幸せになれることはありません。なぜなら彼らは「下着を盗る」というプロセス(過程)に依存しているからです。これが、下着泥棒が延々と犯行を繰り返してしまう理由なのです。

では、なぜこうした人達はとった下着を自宅に大量に溜め込むのでしょうか。

繰り返しになりますが、彼らは盗る過程に依存をしているのであり、盗った下着にはさして価値を感じてはいません。(彼らの多くは、盗んだ下着を用いての性的な処理も行なわないのです)

しかし、手に入れるために多大な苦労をしたという事実はあるために、止む無くそれらを人目のつかない押入れなどに押し込んでおくのです。

「だったら捨てればいいのに」と考える人もいるかもしれません。しかし、着もしない服を「値段が高かった」という理由で、とりあえずタンスに保管しておく、なんて経験は誰にでもあるはずです。

私はいつも、こうした患者を前にすると、例の登山家の話を思い出します。

「登山家はなぜ山を登るのか」、答えは「そこに山があったから」です。そして登山家にとって大切なことは、あくまでも「自分の足で登る」過程であり、ヘリコプターではダメなのです。

では、下着泥棒は何のために下着を盗むのか。

答えは「そこに下着があったから」だと、言えるのです。

 

プラセボのレシピ:第325話

 

※ 先日、東京スポーツさんに寄稿させて頂いた文章を一部加筆、修正したしました。

 

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